赤色3号と発がん性リスク・安全基準の整理
■ 赤色3号(Erythrosine)とは
赤色3号は、食品や飲料、菓子などに使われる着色料の一種です。海外では一部禁止されている一方、日本では「安全性に問題なし」として使用が認められています。
■ 発がん性リスクに関する科学的知見
- 動物実験で高用量投与により甲状腺腫瘍の増加が報告されている(特にラット)。
- 人への影響は「証拠不十分」とされているが、慢性的な低用量摂取のリスクは議論が残る。
- 国際がん研究機関(IARC)による発がん性分類はされていない(2024年現在)。
■ 各国の規制状況とその背景
地域 | 規制内容 | 理由・背景 |
---|---|---|
日本 | 使用可能(使用量制限あり) | 摂取量がADIを下回れば安全と評価 |
アメリカ | 一部用途で禁止(化粧品など) | 動物試験での甲状腺腫瘍リスクを重視 |
EU | 食品への使用禁止 | 予防原則に基づく対応 |
カナダ | 使用可能(制限あり) | 日本と同様に摂取量に基づく評価 |
■ 安全基準(ADI)と具体的な摂取量
▶ 許容摂取量(ADI: Acceptable Daily Intake)
体重 | 1日あたりの許容摂取量(ADI) |
---|---|
60kg(大人) | 6 mg/日 |
20kg(子ども) | 2 mg/日 |
▶ 実際の食品に含まれる赤色3号量(目安)
食品例 | 赤色3号使用量(目安) |
---|---|
魚肉ソーセージ 1本 | 約0.5〜1.0 mg |
桜でんぶおにぎり 1個 | 約0.4 mg |
市販ゼリー 1個 | 約0.3〜0.8 mg |
■ 危険となる摂取量の目安
動物実験での「影響が出ない最大量(NOAEL)」は 10 mg/kg 体重/日 です。これに100倍の安全係数をかけて、ADI(0.1 mg/kg 体重/日)が設定されています。
ADIを超えた摂取がただちに危険とは限りませんが、「安全」とは言えない状態となります。
■ 子どもが影響を受けやすい理由
- 体重あたりの摂取量が大人より高くなりやすい。
- 甲状腺など発達途上の臓器が影響を受けやすい。
- 着色菓子・加工食品など特定食品に偏ると超過リスクが高まる。
■ 日本の評価と説明不足による問題点
評価の考え方 | 問題点 |
---|---|
「体重×ADI」で安全ラインを設定 | 実際の子どもの摂取実態が把握しづらい |
リスクベースアプローチ(量を守ればOK) | 消費者には「海外では禁止なのに?」という不信感が残る |
■ 摂取量とリスクの関係(イメージ)
摂取量 │ ┌──────────────────────┐ │ │ NOAEL(影響なし) │ │ └──────────────────────┘ │ ┌─────────────┐ │ │ ADI(許容摂取量) │ ← 安全マージン100倍 │ └─────────────┘ │ 普段の摂取量(多くはここ) │──────────────────────────▶ 少量 適量 多量 過剰
■ まとめ
- 1品でADIを超えるケースは稀だが、複数の加工食品を重ねて摂取する場合は注意が必要。
- 特に子どもは体重あたりの摂取量が高くなりやすく、摂取状況の把握と説明が重要。
- 欧州と日本の評価基準(予防原則 vs リスクベース)の違いが、消費者不信の一因となっている。